電池式3A4ミニパワー全段差動プッシュプルアンプ

(2014年1月:製作)

 

 

前書き

 3S4電池式差動プッシュプルアンプは自分でも気に入り、また他の方に聴いて貰っても好評でしたが、何しろヘッドフォンアンプ並みの小出力です。電池式でもう少し出力の稼げるアンプが作れないかと思い、球を探し始めました。電池管の種類は限られていますが、3A4なる出力管はヒーター電流が3S4の2倍でプレート電圧も最大150Vと3S4の90Vの1.67倍、プレート損失2Wと使えそうなスペックです。3結特性が見つかりませんでしたが、大体のところは3S4から推測出来そうです。逆にこれ以外の電池式出力管が見つかりません。そこで3A4の使用を前提に発展型電池式アンプを作ってみることにします。

 

設計

 さて設計開始、動作点はプレート電圧130V程度でプレート電流16mA(これでプレート損失2.08W、3結ですので一部はスクリーングリッドで消費されるため、ほぼ定格一杯となります。)プッシュプル2本×2chで64mA、初段分の電流を含めると70mA程度の電流が供給出来て10時間(設計基準は前回と同じ)もたせるには700mAhの容量の電池が必要です。そんな電池があるでしょうか。 ありました! 秋月電子にパナソニック製3.6V830mAhのニッケル水素電池を、なんと150円で売っています(容量や寸法から見て単4相当のセルを3個直列にしたものと思われます)。この電池を40個直列にすることにしました。それでも電池のお値段は6,000円、3S4の時は006P型7.2V300mAhの電池を11個直列にして8,800円でしたから、容量5倍でこのお値段はお得です。フィラメント用の電源は前回はヒーターをパラにして、単3型ニッケル水素1本としていましたが、今回は電流が倍なので、2本直列の2.4Vです。プッシュプル用の2本を並列で200mAとなりますから、これで約10時間の動作時間となります。その他の点では初段のFETを2SK30からgmの高い2SK170に変更して、回路は大体決まりました。

 回路図はこちらです。途中で変更はありましたが、最終的なものを記載しています。

 

製作と調整

 それでは早速、部品調達・・・ですが、秋葉原に行っても3A4が見つかりません。インターネットに価格表示のあったお店でも在庫は2本のみ、何店か回っても在庫なしです。 困ったぁ! その日は諦めて(真空管が手に入らないので電池も買わずに)どこかに売ってないかインターネットで検索をかけて見ました。すると関西のアマチュア無線家の方が在庫を譲って下さっているページがヒットして、問い合わせるとストック品はないが、中古ならあるとの事。直ぐに注文することにしました。中古なので多めに10本注文しましたが、NGは1本のみでした。歩留り優秀です。前回の電池式アンプを1S4ではなく、3S4で製作したので、そのまま差し替えて動作チェックが出来ました。感度も3S4に比べると低いことが判明したので、初段のFET変更も妥当な事が分かりました。(実はその後、電池を買いに秋葉原に行った時に初めて寄った店でRCA製のストック品を見つけ、こちらも購入してしまったのですが。)

 前回はB電源用の電池も一つのケースにいれましたが、さすがに今回は収めるのが難しいので、別筐体(電池ボックス)として、アンプ本体とはケーブルで結びます。まずはどの位の大きさになるかですが、10個のユニット電池を5×2で並べて、それを4段重ねにする事にしました。1段毎にアルミ板に両面粘着テープで止めて行き、スペーサーで重ねます。ケースは200×150×60の大きさです。高さの関係から隙間が殆んどないのですが、急速充電は行わないので熱がこもる心配は無いかと思います。


ずらりと並んだ電池のユニット(10個×4)です。


 これを組み上げて、ケースに入れました。

 困ったのが、電源端子です。通常(特に高電圧の場合は)供給側をメス、受電側をオスにして安全性を確保するのですが、電池ボックスは充電器からは受電側、アンプに対しては供給側です。別端子にしてダイオードを入れて一方通行にするのも手ですが、適切なDC電源用の端子が見つからなかった事もあり、今回はひとつの端子にしたので、充電しながらの使用は出来ません。端子のショート対策としてヒューズを充電器の入出力、電池ボックスに入れています。

 充電器は0.1C(83mA)で16時間を基本に設計しましたが、電池の電圧(144V)に対して適切なトランスが見当たりません。一応絶縁トランスの2次側で電圧の一番高い端子(120V)を使用する事にしましたが、10VAのトランスなので、得られる直流電圧が低めで、充電後期では0.1Cの電流確保が出来ません。もう少し高い電圧(AC150V位)と、電流制限用の直列抵抗を大きくして調整したいところですが、取敢えず手持ちの8V100mAのトランスを継ぎ足しました。

 まだまだ電圧不足ですが、時間を掛ければ何とか充電出来るようです。充電インジケータとして付けたLEDは充電が進むに連れて暗くなっていき、充電電流25mAでは消灯してしまいますが、逆に目安になりますし、この状態だと充電器と接続したままでもそう簡単には過充電になることもないでしょう。回路図で充電器の出力にダイオードが入っています。一見何の役にも立たない感じのダイオードですが、これを省くと充電器にAC電源をつなぐ前に電池側を接続してしまうと、充電池から平滑コンデンサに逆充電が行われてしまい、インジケータ用のLEDが逆耐圧オーバーで飛びます(白状すると、実際に飛ばしてしまいました)。LEDの逆耐圧は通常のダイオードと違って、非常に低いので注意が必要ですね。


小さなトランスを追加した無様な中身の写真です。


この充電器で電池を充電しているところです。今は充電インジケータ(緑のLED)が点灯しています。

 バッテリーボックスの大きさが決まったので、アンプ本体の大きさもそれに合わせます。選んだのはタカチの薄型ケースYM-200で200×150×40です。毎度のことですがこの手のケースを真空管アンプ用として使う時は下部に実装する部品と天板に実装する部品の接続がシンプルになるようにしないと、メンテナンス性が悪くなります。トップの写真や上記の充電中の写真を見て、やけにフロントの真ん中が空いているなぁと思われた方がいらっしゃるかもしれませんが、ケースが薄型なので下部実装部品と天板部品のクリアランスを取るために、このような配置になっています。そこで、内部を公開すると・・・

 
真ん中のフロント部分には初段の基盤が実装されていたのでした。


ついでに背面と底面の写真です。底面に実装されている電池(A電池)は何やら怪しい外観ですが、エネループの限定品です。どうやら
売れなかった(?)らしく通常品よりも安く売られていました。自己放電の少なさには定評のあるエネループだけあって、2013年8月製造にも
係わらず、満充電に近い状態で届きました。結果的にバッテリーは全てパナソニック製となりました(エネループは元々サンヨーですが)。

 同じようなコンセプトの2作目とあって、製作はトラブルもなく(LEDを飛ばしたのは除いて)順調に行きました。今回は真空管ソケットの下部にイルミネーション用のLEDを実装してみましたが、これは出力段のB電圧から初段のB電圧を作るための電圧降下素子の一部であり、無駄に電力を使っている訳ではありません。電池式ですからその辺は、考慮しないといけません(要は熱にするか、光にして飾りに使うかなのですが)。

 

特性測定

 特性概要は以下の通りです。

 これまで帰還後の総合利得は入力1V時に最大出力が得られればよしとの考え方で決めていましたが、平均レベルの低いソース(クラシック系など)を考えると、もう少し余裕があったほうがいいのかなと思い、10倍に設定しています。0.6Wの出力は大体予想通りです。3結にすると5極管ネイティブ動作よりもプレート電圧の低い部分が使えなくなるのでしかたない(データ表では5極管ネイティブ動作で、プレート電圧135V、8k負荷のシングルで600mW出力)ところですが、5極管動作では全段差動の良さが損なわれてしまう(と思っている)ので、この出力で充分です。実は負荷抵抗が16Ωでも0.57Wの最大出力が取れるので、今の動作条件で3A4差動の場合のP-P間の負荷インピーダンスは今回の設計よりもう少し高い10〜12k位にあるのかなと思っています。(トランスの4Ω端子に6Ω負荷をつなぐと1次側は12k相当になりますが。)

 

L ch

R ch

総合利得(無帰還、8Ω)

13.95(24.85dB)

13.97(24.95dB)

総合利得(帰還後、8Ω)

10(20dB)

10(20dB)

ダンピングファクタ(1kHz、8Ω)

3.28

3.22

残留雑音(8Ω、無補正)

0.027mV

0.027mV

最大出力(1kHz、歪み5%、8Ω)

0.61W

0.61W

最大出力(1kHz、歪み5%、6Ω)

0.52W

0.53W

消費電力(概算)

11.5W

重量

3.9kg

 特性図(グラフ)はこちらです。

 


 

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