50BM8全段差動プッシュプルミニアンプ(再製作)

(2003年11月:製作)

 

 

 

前書き

 なかなかコンパクトにまとまった50BM8全段差動ミニアンプ(内容はこちら)でしたが、どうにも「格好良く」ありません。出力トランスの塗装はぼろぼろ剥げるし、見た目のバランスも良くないのです。それに機能的には2系統の入力切替が欲しいところです。そこで再製作することにしました。

 今回のテーマは「部品を見せる」です。最近の家電製品にはスケルトンボディで中の基板や部品が見えるものがありますが、ちょっと通じるところがあるかもしれません。但し、今回の手法はスケルトンではなく、部品を載せたユニバーサル基板をシャシの外に実装してしまおうと言うものです。もちろん真空管アンプは高電圧を扱いますから、安全対策は充分に考えなければなりません。大きさもこれ以上大きくしたくないので、同じケースを使うことにしました。基板が外に出ると出力トランスは必然的にケース内に入り、電源トランスと同居することになります。前回、電源トランスと出力トランスの電磁結合で電源トランスに近いLchの残留雑音が大きくなってしまったのですが、更に近い場所に置いて大丈夫なのでしょうか。この点はある程度覚悟して製作する事にします。残留雑音の目標を甘めの1mVにするのです。そもそも前回の失敗は部品配置の都合上、電源トランスと出力トランスの向きが同じになってしまった点にありました。電源トランスからの磁束を出力トランスが効率よく拾ってしまいます。今度はそれを考慮して設計します。

 

設計と製作

 回路は基本的にキャリーオーバーですが、少し変更しました(回路図はこちら)。

   1. 出力トランス(ノグチPMF−15P)を、東栄OMP−10Pにする。
        これはPMF−15Pが音の面(低域)で物足りなく感じたからです。OMP−10Pは端子剥き出しですが、
        ケース内に収めるので見栄えは問題ありません。(実はこれが後で大問題に!)

   2. 初段のプレート電流を僅かに増やし、負荷抵抗を小さくする。
        こちらは単純で、手持ちの定電流ダイオードの都合です。

   3. C電源をダイオード直列から、抵抗+発光ダイオードに変更しイルミネーションとして使用する。
        青緑の発光ダイオードを見かけた(最近信号にも使われてますね)ので、使ってみようと思ったと言う
        ミーハーな理由です。

 回路基板は露出するので安全対策として、上部をアクリル板(スモーク)でカバーします。また高電圧部分は背の高いコンデンサに挟まれるような配置とし横から指を入れても触ってしまう事のないようにしました。製作で一番気を使ったは、リード線が曲がったり部品が傾いたりしないように実装することでした。見せるのも大変です。回路基板のアップ(アクリル板を外した状態)は以下の通りです。

 

 ケースの中にはトランス類・入出力端子・スイッチ・ボリュームそれに電源基板が入りますが、これらの配置はミリ単位のせめぎ合いとなりました。それでも何とか配線が完了し出来上がりました。

 各部電圧もOK、出力段の電流バランスを調整して無帰還で音を出してみます。大丈夫!ちゃんと鳴ります。負帰還を掛けてみると、ありゃ、ゲインが上がった。出力トランスの1次端子P1とP2を繋ぎ換えて直します。無帰還で周波数特性を測った後で、帰還量を決め、こちらの周波数特性も測ります。

 そして残留雑音を測定したのですが、2.0mVもあります。うーん、困ったなぁ。やっぱり無謀だったか? 試しに取り付けビスを外してトランスを遠ざけると、0.1mVまで減ります。元に戻して、2mm厚の鉄板を間に入れてみますが1.5mV程度。磁気シールドをするには1面だけではだめで、3面を覆う必要がありそうですが、なにしろスペースに余裕がないので、加工精度が要求されます。

 どうしたものかと何日か考えていたのですが、出力トランスのをケース側面に取り付けてみてはどうかと思い付きました。取り付け角度を90度変える訳です。その結果、残留雑音は1.2mVになりました。でもまだ目標をクリアできません。やはり裸トランスの限界でしょうか。そこで出力トランスをPMF−15Pに戻す事にしました。こちらは鉄板のケースに入っているので、磁気シールド効果があるはずです。PMF−15PはOPT−10Pより少し大きくて、更にキチキチになるのは避けられません。側面の取付穴は念のためどちらのトランスも取り付けられる様に開けます。トランス側の取り付け穴が楕円状になっており、ノグチの内側と東栄の外側でなんとか共通ポジションがあるのです。

 下部ケースに取り付けていた部品を全て外し、取り付け穴を開けてから、再実装します。天板とトランスのクリアランスはたったの5mm、ここにシールド線などが這いまわっているので天板が閉まらなくなってしまいました。ボリュームも僅かにトランスに当たっています。線材の結束を解き、平らに直し、出力トランス側の取り付け穴も少し削って、トランスを移動させます。これで何とか押し込む事が出来ました。電源電圧と音が出ることを確認したら、今度は真っ先に残留雑音を測ってみます。やったぁ、Lchが0.82mV、Rchは0.65mV。目標達成です。これで良しとしましょう。 ケース内部はこんな感じになりました。

 結局、トランスが元に戻ってしまったので、音も元通りです。でも見栄えは上々で結構気に入っています。入力セレクタも付けたので実用性も向上しました。

  

特性の測定

 特性概要は以下の通りです(8Ω負荷)。無帰還時の利得が低いので、負帰還量はごく僅かですが、仕上がり利得を12.0dBとしました。ダンピングファクタも約3を確保しています。

  

L ch

R ch

総合利得(無帰還)

4.90 (13.8dB)

5.13 (14.2dB)

負帰還量

1.8dB

2.2dB

総合利得(帰還後)

3.98 (12.0dB)

3.98 (12.0dB)

ダンピングファクタ(1kHz、無帰還) 2.23 2.28
ダンピングファクタ(1kHz、帰還後) 2.95 3.22
残留雑音(帰還後、無補正)

0.82mV

0.65mV

最大出力(1kHz、歪み5%)

 2.3W

 2.4W

消費電力

47.1VA (AC 100.8V)

 今回、同じアンプで2種類のトランスの周波数特性を測定してトランスによる違いをはっきりと感じる事が出来ました。ノグチのPMF−15Pと東栄のOPT−10Pの無帰還時の周波数特性(出力1W)を測定しましたが、東栄は10Hzのレベルが−0.5dB程度であり、小型トランスとしては非常に優秀と思います。しかし高域は3dB低下点が25〜28kHz程度ちょっと不満です。それに対してノグチは20Hz以下で急に減衰し、10Hzでは−4.5dB程度です。高域は3dB低下点が51〜59kHzとなっています。但し、これは50BM8の3結でドライブした場合で、内部抵抗の低い球でドライブするとノグチでももう少し低域が伸びます。

 歪み率特性は、残留雑音(ハム)が多いので全般的に高めに出ていますが、まあそこそこの特性と言えるでしょう。

 特性図(グラフ)はこちらです。


 

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