6B4G全段差動プッシュプルアンプ

(2003年9月:製作、2004年3月:改造、2006年8月:再改造)

 

 

前書き

 6B4Gを使った直熱管全段差動アンプも、7233 3パラSEPPアンプを作った後はお蔵入りしていました。7233と聞き比べると、もう少し引き締まった音が欲しいなぁと感じたからです。それに小手先の業で改善しましたが、NFBによる安定度の低下も気になっていました。そこで再び改造に着手です。問題点を解決する手法は「ワイドラー」風です。はたして旨く行きますかどうか。 改造前のページはこちらです。

 

設計

 元の構成では、2SK30A >>直結>> 5814A >>C結合>> 6B4Gとなっていました。低域と広域の時定数を減らして安定動作を狙ったのですが、結果的に安定度が充分とは言えず、5814Aにカソード帰還を施してゲインを下げ、オーバーオールの負帰還を減らす形になりました。今考えると高域のポール分離が充分と言えず発振しやすくなっていたと思います。それに中低域の引き締まった音を目指すにはダンピングファクターをもう少し上げたアンプにしたいところです。

 そこで裸ゲインを上げてオーバーオールの負帰還量を増やし、ダンピングファクターを上げます。高域の安定動作のためにワイドラー風の設計を取り入れ、ポール分離を行います。具体的には2段目の5814Aを12AX7Aに変更してゲインを上げます。内部抵抗の高い12AX7Aを使うと高域のポールはこの段が一番低くなりそうなので、12AX7Aに微小容量によるP−G帰還を施してポールを更に下げて安定度を確保します。(でも本当に12AX7Aで6B4Gをドライブできるのでしょうか?)

 12AX7Aで6B4Gをドライブするとなると一番問題になりそうなのが、6B4Gのグリッド抵抗です。現在はバイアス安定のために56kΩになっていますが、当然ドライバの交流負荷になりますので、12AX7Aには厳しい動作になります。そこで6B4Gをドライブできる振幅(100Vp-p)を確保しながら、グリッド抵抗値を含めた動作点を考えて見ます。結果的には電源電圧300V、プレート負荷抵抗170kΩ、プレート電流0.9mA、6B4Gのグリッド抵抗150kΩとしました。下図の青線が直流負荷抵抗、赤線が交流負荷抵抗です。

 

  これで大体20dBくらいの負帰還が掛けられるはずですが、6B4Gのグリッド抵抗が大きくなった分、段間結合コンデンサとの低域時定数が下がりますから、低域安定度が問題になります。そこで結合コンデンサを0.1μに変更します。約8Hzくらいの時定数となって、出力段の時定数約1.6Hzとのスタガ比は5となります。負帰還量からはちょっと厳しいかもしれませんが、安定性に問題があるようなら後で変更します。高域も出力段(出力トランス)の時定数が100〜120kHzと予想されますので、ワイドラー手法によるドライバ段のポールは10kHz以下にします。この辺の部品定数はカット&トライ(下の製作と調整に記載)で決めますが、最終的に約5.7kHzとなりました。回路図はこの通りです。

 

製作と調整

 改造と言っても前回のように部品を全ておろして、シャシの塗装から行った訳ではないので時間は掛かりませんでしたが、逆に追加部品を組み込むのは空中配線となってしまい、見た目は良くありませんし、何かのはずみで変なところに接触しないように気を使います。が、結局は下の写真のようにごちゃごちゃになってしまいました。

 改造が終わったら調整です。(配線チェックや電圧チェックは当然のこととして)まずは一応音が出るかどうか確認します。それからドライバ段のP−G帰還用のコンデンサとグリッド直列抵抗を決めるために無帰還で周波数特性を測定します。この部品定数ですが、コンデンサは手持ちの18pFを使います。ポールを5kHzと仮定すると50kHzでは裸ゲイン(上のロードラインからは約55)の1/10となって利得が5.5です。コンデンサのリアクタンスは50kHzで177kΩですから、グリッド直列抵抗は、凡そ177÷5.5=32kΩとなります。この値は初段の出力インピーダンスを含んだ値ですし、コンデンサも12AX7Aの電極間容量を見込まなければならないのですが、まずはえいやっと33kΩで測定してみます。

 案の定、ポールは下に来ています。それでもNFBを掛けて所定のゲインにした時に可聴帯域内がフラットになれば良いのですが、測定してみると減衰しています。方法は2つコンデンサを小さくするか、グリッド直列抵抗を小さくすることです。でもコンデンサは手持ちに適当な容量のものがなかったので、グリッド直列抵抗を小さくする事にします。入力インピーダンス(=初段の負荷抵抗)が下がるのですが、15kΩにして測定してみました。今度はばっちりです。左右両チャンネルとも簡単に測定をしてNFBを掛けて所定ゲインに調整します。次に10kHzの方形波を入れて、無負荷や純容量負荷の安定度を見ます。純容量負荷の時にリンギングが見られますが発振はしませんし、これを余り追い込むと音が冴えなくなってくるので、これで良しとします。(それにしても無負荷の時の波形が一番きれいで、8Ω負荷の時にオーバーシュートがあるのは・・・・・)


 

特性の測定

 特性概要は以下の通りです。(8Ω負荷のデータ) Rchの無帰還時の利得が低いのは以前からで、2SK30による初段アンプのバラつきです。

  

L ch

R ch

総合利得(無帰還)

79.4 (38.0dB)

61.7 (35.8dB)

負帰還量

21.0dB

18.8dB

総合利得(帰還後)

7.08 (17.0dB)

7.08 (17.0dB)

ダンピングファクタ(1kHz、帰還後) 41.7 33.3
残留雑音(帰還後、無補正)

0.12mV

0.15mV

最大出力(1kHz、歪み5%)

8.0W

7.3W

消費電力

123.1VA (AC 101.9V)

 特性図(グラフ)はこちらです。


 

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