6FY7全段差動プッシュプル CDラジオ

(2007年7月:製作)

 

 

前書き

 家内から「CDラジカセ無い?」と聞かれて、どこでも全段差動の音が聞ける真空管式のポータブルオーディオがあればいいなぁと、製作する事にしました。もちろんカセットテープまで搭載する気はありませんが、スピーカーが一体となって持ち運べる小形のシステムを目指します。

 

設計

 ポータブル機器を製作するとなると、アンプそのものよりもどういった機器を組み合わせてシステム(大げさ?)を作り上げるかと言う点が重要になります。最初にスピーカーですが、これは固定用のネジ穴があることが条件です。思い浮かぶのはBOSEの101シリーズですが、デザイン的に見てもうちょっとスクェアな物の方がアンプ部と組み合わせやすいでしょう。そこで書斎(と言うか工作室かも、要するに私のお城ですが)の壁に取り付けてあった100Jを流用する事にします。書斎用には中古で程度の良さそうな101TEを手に入れて入れ替えました。
 100Jの高さは250mmですから、センターユニット(CDプレーヤーアンプ)の高さもこれに合わせる必要があります。CDプレーヤーはカーオーディオ用1DINタイプのレシーバーアンプを使用します。

    1.プリアウトがある事(必須)。
    2.安い事。
    3.AUX IN端子のある事。
    4.出来れば圧縮ファイル(MP3やWMA)の再生が可能な事。

 以上を条件として探した結果、選んだのがJVCのKD−C434です。『高音質・高精度な「バーブラウン製24bitDAC」搭載』だそうで、音質にも力が入っていそうな製品です。(この機器を製作中にJVCが国内カーオーディオから撤退するとのニュースがありました。アフターマーケットのカーオーディオ市場は縮小しているのでやむを得ないでしょう。私ももっぱらNAVI一体型ですし。)
 50W×4のパワーアンプが内蔵されていますが、使いません。スピーカーを接続しなくても壊れませんし、パワーアンプが無い製品は一部の高級品で、高価です。

 センターユニットは製作の容易さから木箱に納める事にしますが、12mm厚の板を使うとして、CDレシーバーが50mmの高さですから、残りは176mmとなります。また幅はCDレシーバーが180mmですから取り付け方法も考えて200mmとします。これ以上の幅にすると、CDレシーバー部の取り付けが間延びして見えるからです。電源部とアンプ部は分離して作成した方が自由度が高いのですが、電源部とアンプ部の幅を合わせながら適切な高さの市販シャーシを探すのには苦労しました。結果として、電源部にタカチの200×200×70のケース(なんと青色塗装)。アンプ部には同じくタカチの200×150×40のケースを使用しました。シャシ上部空間は66mmですから、真空管もこれ以下の高さ(もちろん発熱を考慮して天板とのクリアランスを確保する必要があります)の物を選定しなければなりません。
 小さく納めようとすれば、複合MT管がリストの上位に来ますが、小さい管である程度のプレート損失を食わせるためか、結構高さがあって予定したスペースに入りません。それともう一つ、見栄えにこだわってLEDによるイルミネーションを施したいので、コンパクトロン(下からLED照明をした時に映えるんです)の中から選びます。まず頭に浮かぶのが6FM7(GT管6EM7と同等球)ですが、6FM7に比べてプレート損失は小さいものの少し出力部のμが高い6FY7をチョイスしました。バイアスが5V位浅くなるので発熱の点からも有利です。気になる高さも最大2インチなので大丈夫です。ロードラインを引いてみると、動作点は200V、35mAで4kΩ程度の負荷が良さそうです。スピーカーのインピーダンスが6Ωですから出力トランスには10k:8Ωの物を使用します。

 2段構成では少し利得が足りなさそうなので、入力部に手持ちのトランスを入れて昇圧します。このトランスはイルミネーションアンプ第1作6LU8差動プッシュプルで使用していたものですが、今回解体して使用しました。入力トランスを使用すると、アンプの構成をバランス化することも可能です。当初はそのように設計したのですが、高域が大きく減衰するトラブルに見舞われたので、一般的なスタイルにしました。回路図はこちらです。

 電源部も手持ちのトランス(これは7233SEPPで使用していたものです。3パラ化に伴い遊んでいました。)を使用したので、東栄の100V・20VAの絶縁トランスを2個使う構成になっています。CDレシーバー部への電源供給は12V5Aのスイッチング式ACアダプタを使用し、メモリ保持のために006P形の充電池を入れました。

 

製作

 部品を集めて製作開始ですが、まずは早速トラブル発生。予備も含めて6本買った6FY7のうち2本の背が高いのです。同一ブランドなのですが、一方はサイドゲッター、他方はトップゲッターとなっています。データシートをもう一度検索してみると、高さ2インチの他に2.5インチと言う物もありました。これがトップゲッターバージョンのようです。翌週秋葉原に出かけて、高さの低いものに交換して貰い事なきを得ました。製造時期によって、構造が変わるのは結構あるらしいです。

 トラブルと言えばもうひとつ。出力トランスにノグチトランスが出している、菅野電機OTN−42Pの復刻版を選択したのですが、サイズを勘違いしていて高さが69mmあり、製作中に木枠に納まらない事が判明しました。仕方がないので、底板と天板の厚さを12mmから9mmに変更して、クリアランスを稼ぎました。ついでですが、横幅はアルミケースの幅200mmに対して2mm余裕を持たせています。

 先に述べましたがバランス構成(反転入力アンプになります)では、大幅に高域が低下するトラブルに見舞われました。原因は想像ですが、ゲインを稼いでいる初段のポールが低くなってしまったのではないかと思われます。バランス反転アンプには低インピーダンス構成が必要と思われます。

 なんだかんだと苦労して出来上がった物は以下の写真の通りです。センターユニットを納めているのは木箱と書きましたが、革調のビニールシートを張っています。ラジオ用のロッドアンテナは調達に苦労した部品です。アンプ部のケースは通常と上下を逆にして使用しています。この方が外部結線が楽だからです。ケースのカバーはオリジナルのままで黒に塗装はしませんでした。シルバーの「コの字」形のラインがアクセントになっていると思っています。

 

 背面はこんな感じです。リモコンが金具に引っ掛けてあるなんて、素人工作そのものですが、なかなか使い勝手は良いのです。電源部(下段)にある怪しげな端子ですが、CDレシーバーのスピーカー出力を引き出しています。電源に使用しているACアダプタが5A出力なので、単体でもパワーアンプ部分を駆動出来るのです。この時は真空管アンプ部分の電源を切れるようになっています。

 

 アンプ部、CDレシーバー、と電源部をどのように結合しているかをお見せします。下の写真はアンプ部を載せる前のものですが、アルミアングルの組み合わせに、前面化粧板として木片を黒に塗装して使用しています。

 

 アンプ部の内部はこんな感じです。相変わらず配線の見栄えは悪いですが、ポイントは押さえているつもりです。

 

 電源部はこのようになっています。ケースの元の色が青だったのが分かります。

 

調整と特性測定

 可変抵抗による調整箇所は出力管のバランス調整と初段の定電流回路です。出力管は適当に差し替えながら、バランスを調整します。球を差し替えると電圧増幅部のバランスも変化する(複合管ですから)のですが、出力トランスのDC電流バランスを優先します。電圧増幅部のバランスが極端に悪い場合は、別の組み合わせを考えます。
 負帰還抵抗は固定抵抗ですが、左右で利得差が見られた場合は適当に並列抵抗を入れることにより最終的なゲインを調整します。

 出力トランスが復刻バージョンのため広帯域でないので、負帰還に伴う位相補償はあまり必要ないかなと予想していましたが、特性を測定した結果では問題ないようです。容量負荷による方形波応答もノートラブルです。

 特性概要は以下の通りです。

 

L ch

R ch

総合利得(無帰還、6Ω)

9.77(19.8dB)

9.55(19.6dB)

総合利得(帰還後、6Ω)

5.25(14.4dB)

5.25(14.4dB)

ダンピングファクタ(1kHz、6Ω)

4.59

4.33

残留雑音(6Ω、無補正)

0.34mV

0.33mV

最大出力(1kHz、歪み5%、6Ω)

4.0W

3.8W

最大出力(1kHz、歪み5%、8Ω参考)

5.2W

5.0W

消費電力(アンプ部のみ、AC103.0V)

64.9VA

重量(システム全体)

13.5kg

 特性図(グラフ)はこちらです。

 

最後に

 実は完成後にも誤算がありました。CDレシーバーの状態メモリを保存するために設置した充電池ですが、1日程度しか持ちません。カーオーディオ機器のスタンバイ時の消費電力は結構大きいようです。まぁ、バッテリー容量はでかいので問題はないのでしょうが、盲点でした。とりあえずこのままで使用しますが、後で対策を考える予定にしています。


 

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