6Z7G全段差動プッシュプルアンプ

(2008年1月:製作)

 

 

前書き

 クラシックコンポーネンツ(秋葉原)のWebサイトに、6Z7Gと言う球が出ています。双三極出力管ですが1本\1,000と、とても安いのです。でも安いのには何かの訳があるはずです。その素性を調べてみると、古典管79のピン配置をUX化した6Y7Gの弟分と言った球で、最大プレート電圧が180V、平均プレート損失は2ユニットで最大8Wと控えめなスペック。しかもカソードは2ユニット共通だし、グリッド電位はプラスで使用するポジティブグリッド管です。これは使いにくい! プレート損失が小さいので出力は取れませんし、グリッド電流が流れるのでドライブが大げさになります。

 調べてみると元々は「自動車用ラジオ」の出力段として設計されたようです。ゼロバイアスのB級プッシュプルとして使い、入力をトランスでドライブしてやれば、電力利得は10倍以上取れますし、回路もシンプルです。B電圧が低いのもそのためでしょうか。

 この球を現代のオーディオアンプ出力段に使用した例をネット検索してみましたが、引っ掛かってきたのは(日本語ページでは)長島勝氏がラジオ技術2006年10月号に発表された回路1件だけです。この例では2ユニットをパラ接続してプレート損失を稼ぎ、出力トランスの2次巻線をカソード帰還に使用してDF等の諸特性の改善を図っています。(検索できたのは回路図だけで、製作記事は読んでいませんので、私の想像ですが。)

 この球を使って全段差動アンプを作ると出力は期待できませんが、どんな音がするのか興味があります。自作第1弾アンプが、ポジティブグリッド管6AC5GTの差動プッシュプルだったので、ポジティブグリッド管には思い入れがあるんです。

 

設計

 具体的な設計ですが、なるべく手持ちの部品を活用する事にします。(とりあえず音を出してみようと言う方針です。)

 6Z7Gのドライブは6AC5GTの時と同様にダイレクトカップルとします。ドライバのプレートを6Z7Gのプレートに接続して、局部帰還を掛ける手法も一緒です。プレート電圧が低いのでドライバには立ち上がりの鋭い特性が必要ですが、手持ちの5687WAが使えそうです。(ヒーター電力は、ドライブ管が出力管の3倍と言う変なアンプになります。)出力トランスは10kΩp-pの三栄OPT-10P(これも手持ち)とし、6Z7Gの動作点はプレート電圧170V、カソード電流25mAとします。この動作点は8Ω負荷だと比較的バランスがとれていますが、6Ω負荷だと電圧高め・電流低めとなります。ダイレクトカップルだと出力管のグリッドをマイナスバイアスに振り込めないので、少電流領域が利用出来ないのです。損失は4.25Wとなりますが、グリッド電流が流れますのでプレート損失は4W以下と見込まれます。

 ドライバのグリッド電位はプラスに設定する必要がありますが、初段をFETとすることで直結が可能となります。ドライバの所要入力から考えると、電源電圧として48V位は欲しいところです。一般的な2SK30ATMは耐圧が50Vなので、高耐圧(100V)の2SK373を選択しました。

 回路図はこちらです。電源トランスはノグチのPMC-130M(これは新規購入)ですが、これでも少し電圧が高いので平滑回路で電圧調整しています。二次電圧150V位のトランスがあれば良いのですが・・・・・。

 

製作と調整

 足りない部品を買い集めに秋葉原に行ってみると6Z7Gは確かに1本\1,000なのですが、箱なしで1本\600と言うのもあります。予備も含めて所要数の倍を買いますから、迷わず箱なしに決定。ケースは7233SEPPに使っていたボンネット付きのシャシを再利用して必要な穴を開けます。余計な穴もありますがボンネットを被せてしまえば、それほど目立たないでしょう。シャシが再利用のため部品配置が最適化できていませんし、アンプの規模の割りには大きなシャシです。配線の引き回しは長くなりますが、部品配置に余裕があるので製作は楽です。発熱の多い部分はユニバーサル基盤に組んでシャシの上に出してしまいましたので、熱がこもる事もないと思われます。ボンネットを取った時の外観は以下の通りです。出力管(6Z7G)よりドライバ管(5687WA)の方が、明るく輝いています

 ボンネットを取った時の外観とシャシ内部(相変わらず配線は見苦しい)は以下の通りです。シャシに余裕があるのと、かなりの部分がシャシ上に配置してあるので、本当にスカスカです。

 

 製作は段階的にチェックを掛けながら進めましたが、電源ユニットのチェックは手早く行います。出力管を接続していない状態で電源を入れると、B電圧がかなり高くなって初段FET用の電源を作っているツェナーダイオードに流れ込む電流が増えて熱くなるからです。普段はこういった事を嫌ってトランジスタ回路用の電源はトランスの別巻線から作るのですが、今回はやむなしです。

 組み立てが終わったら各部電圧をチェックして、設計値と大きな差異がないことを確かめます。出力段の定電流回路は予め電流値を調整しておきますが、念のため組み込んだ状態で電流を確認します。出力段のプッシュプル電流バランスは直結なので、初段の電流バランスを調整することで行います。電流検出は、出力トランスの直流抵抗を使用していますが、OPT-10PはP1とP2の直流抵抗が良く揃っている(2台共)ので、調整は楽です。

 NFB調整抵抗をゼロにして音を出してみます。問題なく音が出てきました。調整抵抗を大きくすると音量が下がりますので位相も合っています。無帰還時の電圧利得は17.0dB(Lch)、16.5dB(Rch)です。NFBを掛けるにしても僅かな量になりますが一応仕上がり利得を13dBとしてNFBを掛けました。この状態で10kHz方形波を入れて波形を観測しますが、立ち上がりが随分なまっています。高域特性は狭そうです。負荷抵抗をオープンにしても、容量負荷(0.1μ)にしても発振しませんので、NFBにおける位相補償は行いません。そういえば前回このトランスを使ったときも、高域は20kHzで既に低下していました。この段階でしばらく音を聴いてみることにします。

  電源を入れてから動作可能状態になるまでに、レベルは低いのですが、パチッと言う感じのノイズが出ます。この音は6AC5GT差動でも出ていますので、この形式のアンプに共通なノイズと思われます。(市販品だったら、ミューティング回路を入れないとダメですね。)

 

特性測定

 特性を測定しているうちに歪み率が管の組み合わせによって大きく変化する事象に遭遇しました。出力管とドライバ管で歪み打ち消し作用があるのかも知れません。その結果、真空管を差し替えましたので無帰還時の利得等も変わってきました。最大出力は6Ω負荷で1.3Wとミニパワーアンプとなってしまいましたが、ロードラインのバランスの良い8Ω負荷では2W以上となります。

 特性概要は以下の通りです。

 

L ch

R ch

総合利得(無帰還、6Ω)

6.46(16.2dB)

6.46(16.2dB)

総合利得(帰還後、6Ω)

4.47(13.0dB)

4.47(13.0dB)

ダンピングファクタ(1kHz、6Ω)

1.37

1.39

残留雑音(6Ω、無補正)

0.17mV

0.19mV

最大出力(1kHz、歪み5%、6Ω)

1.4W

1.3W

最大出力(1kHz、歪み5%、8Ω)

2.3W

2.0W

消費電力(アンプ部のみ、AC101.9V)

42.8VA

重量

6.5kg

 特性図(グラフ)はこちらです。

 


 

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