7233 3-Parallel SEPP DCアンプ

(2005年5月:製作)

 

 

前書き

 約1年前に7233を使ってSEPPアンプを製作しました。7233を単独で使用して、マッチングトランス(ハモンドの119DA)との組み合わせで、5W強の出力を得ました。なかなか良い感じだったのですが、暫く聞き込むうちに不満も出てきました。どうもマッチングトランスが力不足のようです。真空管アンプにおいて出力トランスが音質に与える影響は大きなものがあります。だから「OTLにしないとダメなんだ」と言うような極論を述べるつもりはありませんし、物量を投入して8Ωや6Ωのスピーカーを直接接続可能なOTLアンプを作る気もありません。

 でもOTLってどんな感じだろう? と、やっぱり気になります。そこで7233アンプを解体して、OTLにもなるアンプを製作する事にしました。具体的にはアンプの負荷インピーダンスを64Ω程度に設定するとともに、64Ωのスピーカーシステムを製作します。このアンプとスピーカーシステムの組み合わせだとOTLになる訳です。もちろん一般のスピーカーも鳴らせるようにマッチングトランスも用意します。

 

設計

 まずは出力段ですが、やはり7233を使用して64Ω負荷に対応出来るようにします。SEPPで最大出力が稼げるのは負荷インピーダンスと出力管の内部抵抗が一致したポイントです。7233はデータシートによれば約230Ωですから、3パラで77Ω、4パラで58Ωとなります。この値を素直に解釈すると4パラが最適ですが、4パラだとヒーター電流が片チャンネルで8Aにもなってしまいます。(安価で)適当なヒータートランスが見つかりません。そこで3パラとします。また製作のしやすさを考えてモノラル構成2台とします。ドライブ回路は、以前に製作した7233 SEPPアンプ(プロトタイプと呼びます)を極力活用して製作することにします。そのため出力段のグリッド抵抗の値などもドライブ回路の変更がないように選定します。電源電圧はこれまたプロトタイプと同じ125Vにしました。これで約20Wの出力が得られるはずです。出力管のアイドリング電流もプロトタイプと同じ30mAを予定します。アンプのゲインは、最大出力を1Vrmsの入力で得る方針なので、64Ω負荷時20W出力とすると36Vの出力電圧が必要です。つまりアンプの所要ゲインは36です。これを元に負帰還抵抗を決めて回路図を書くとこのようになりました

 電源回路も考え方はプロトタイプと変わりませんが、出力及びヒーター電流から考えて、片チャンネルあたり100V絶縁トランス(東栄Z04−ES、40VA)を2個、ヒータートランス(ノグチPM 633W、6.3V・3A×2)1個、バイアス嵩上げ用トランス(トヨデン40V、0.05A)1個となりました。プロトタイプは正負電源を、それぞれ半波整流で作っていましたが、今回は2個のトランスを直列接続したブリッジ整流です。プロトタイプの平滑回路は抵抗でしたが、今回はお得意の小型チョーク(ノグチPMC−115H)を使いました。回路図はこんな感じになります。

 

製作

 3パラと言う事で、一番考えたのは球のばらつきをどのように吸収するかです。回路設計でバイアス調整を設けましたが、やみくもに差し込んでも訳が分からなくなるに決まっています。そこで最初に球の選別をします。一般的には一定のグリッドバイアスを掛けてプレート電流を測定するようですが、より実践的な方法で選別することにします。どういう方法かと言えば、予定しているアイドリング電流30mAの定電流をカソードに入れ、プレート電圧120Vでバイアス電圧を測るのです。プレート電圧が実際の動作条件と多少違いますが、選別は可能です。7233を20本測定した結果と、使用箇所【正2は回路図中の7233(P2)に対応、負2は7233(N2)に対応】は下表の通りです。

No.

バイアス(V)

使用箇所

No.

バイアス(V)

使用箇所

1

-24.2

 

11

-27.9

Rch 負3

2

-24.8

 

12

-28.1

Lch 負2

3

-26.1

Lch 正3

13

-28.2

予備

4

-26.5

Rch 正3

14

-28.5

Rch 負2

5

-26.6

Lch 正2

15

-28.6

Lch 負1

6

-26.8

予備

16

-28.8

Rch 負1

7

-26.9

Rch 正2

17

-29.6

 

8

-27.5

Lch 正1

18

-30.1

 

9

-27.6

Rch 正1

19

-30.5

 

10

-27.6

Lch 負3

20

不良

 

 メカニカル面では、まずシャシの大きさです。部品の量からしてステレオ分を1台で組むのは困難と判断し、モノラル2台構成としました。300mm×200mm程度で納まりそうだったのですが、現実の製品としては330mm×220mm×50mm(奥澤商店)のシャシを選びました。奥澤商店のアルミシャシは安価ですが底面がしっかり4面折り返しになっており、お気に入りです。電源トランス群のカバーも同じ奥澤商店で200mm×150mm×80mmのアルミシャシを使用します。

 シャシの塗装は既定路線の「派手」系で行きます。今回はメインシャシをピンク(ホンダフィットのアイリスレッドパール)、トランスカバーをブルー(スズキワゴンRのスカイブルーメタリック)としました。でもピンクのシャシに出力管放熱用の穴をボコボコと開けると目立つので、出力管の周りは黒にする事にしました。この塗り分けが結構面倒くさかったです。完成品はこんな感じになりました。別体のマッチングトランスと並べています。マッチングトランスは、K.ameさん手巻きの72Ωタイプ「MT−72」です。ソフトンさん扱いで手に入れる事が出来ました(残念ながら、現在では販売中止となっています)。

 製作はノントラブルでした。まぁ、細かい基板などはキャリーオーバーですから、殆どトラブルの出る場所もないのですが・・・・・。シャシ内部の状態は以下の通りです。上面に出る部品配置からシャシの大きさを決めたので、内部はスカスカです。

 トランスカバーを外すと内部はこんな感じです。メインのトランス2個、ヒータートランス、チョーク2個がキチキチに入っています。バイアス嵩上げ用トランスは、シャシ内部(上の写真)です。

 後ろの端子は左右対称になっています。これは入力ピンプラグが、又裂き(泣き別れ)にならないための配慮です。

 

調整と特性測定

 まずは出力管バイアス調整VRを絞った(各管の特性が一緒)状態で、バイアス調整VRのない球の電流をモニタして、アイドリング電流調整VRを回して電流を所定値の30mAに調整します。次にこの状態で正電圧側3管と負電圧側3管の電流バランスが取れるようにバイアス調整VRを回します。相互のVRの位置で微妙に変化しますので、3管のバランスが取れるまで調整を繰り返します。バランスが取れた段階でアイドリング電流値そのものが変化している場合は、アイドリング調整VRを再調整し、再び3管のバランスを取ります。私の場合はアイドリング電流が所定値の±10%以内に入っていればOKとしました。スピーカー出力端の電圧は2mV程度になっています。パッシブ型ながらDCサーボのお陰でこの辺の調整はフリーです。ここでマッチングトランスを接続して、取り敢えず音を出してみます。音を聴く限りではおかしなところはないようです。10kHzの方形波を入力して出力波形を観測してみたところ、オープン時や純容量(0.1μF)負荷の時にも異常は認められません。負帰還回路の位相調整も不要と見ました。

 そこで周波数特性の測定に入りました。まずは64Ω負荷の状態です。さすがに(OPTによる帯域制限がないため)広帯域で、7Hz〜280kHz(−1dB)です。マッチングトランスMT−72を接続して8Ω負荷で測定しても8Hz〜90kHz(−1dB)となりました。特筆すべきはマッチングトランス使用時に特性の暴れが一切無く素直に減衰している点です。このためマッチングトランスにスナバを入れる事もしません。(最終的には音を聴きながらの作業になりますが、測定段階での対処は不要。)

 今度は歪み特性(64Ω負荷)を測ります。結果は1kHzの最低歪みが0.026%(L)、0.03%(R)、5%歪み時の出力は19.8W(L)、20.4W(R)でした。最大出力は、ほぼ目標通りです。電源トランスの2次側タップを100Vから110Vに変更すると、もう少し出力が稼げるのですが、今のままで充分です。

 残留雑音は64Ω負荷時に左右ch共、0.17mVです。マッチングトランスを使用した8Ω負荷では0.06mVとなりました。

 特性概要は以下の通りです。

 

L ch

R ch

総合利得(64Ω)

38.5 (31.7dB)

38.0 (31.6dB)

総合利得(MT-72使用、8Ω)

13.03 (22.3dB)

12.88 (22.2dB)

ダンピングファクタ(1kHz、64Ω)

24.2

22.2

ダンピングファクタ(1kHz、MT-72使用、8Ω) 9.80 9.62
残留雑音(64Ω、無補正) 0.17mV 0.17mV
残留雑音(MT-72使用、8Ω、無補正)

0.06mV

0.06mV

最大出力(1kHz、歪み5%、64Ω)

19.8W

20.4W

最大出力(1kHz、歪み5%、MT-72使用、8Ω)

18.2W

18.5W

消費電力(アイドリング状態、AC102.1V)

77.7VA

75.5VA

消費電力(最大出力時、AC102.1V)

128.9VA

125.6VA

 特性図(グラフ)はこちらです。

 

最後に

 初のオーバー10Wアンプとなりました。マッチングトランスMT−72との組み合わせでは、かなりご機嫌な音を出してくれています。プロトタイプと比べるとやはりトランスの力量の違いを感じます。さぁて、64Ωスピーカーが完成してOTLになった時はどんな音が出るのでしょうか。


 

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