やり繰り算段・特性測定大作戦

(2013年11月:一部改訂)

 

前書き

 いきなりオーディオ装置を自作した時に、作りっぱなしで完璧とはいきません。著名な製作例のデッドコピーであればテスター一丁で済むかもしれませんが、やはりある程度の特性測定は行って性能に対する担保は取っておきたいものです。特性を測定することで、耳で聞いただけでは分からなかった問題点が発見できることもあります。一般に測定器は高価なものですが、最近はパソコン+ソフトウェアと言う手があります。この手を使えば歪み率の測定等も簡単にできます。ここでは私がどんな方法で測定しているかを紹介しています。

 

ゲイン・周波数特性の測定

 いきなり特殊な測定器が出てきて恐縮(参考にならない)ですが、私が使っているのは有線伝送がアナログ搬送だったころのオシレータとレベルメータです。そのため基本的には電力測定(75Ω系と600Ω系)となっており、読み取り値を電圧に換算して使っています。シンセサイズ方式のオシレータは周波数と出力レベルは正確で安定しているのですが、歪み率はお世辞にも良いとは言えません。このため歪み率の測定には使えませんが周波数特性の測定にはMHzオーダーまで安定して出力出来るので便利です。レベルメータは最大入力が+20dBm(75Ω)の制約(電圧で2.74V)があるので大出力での測定は不可ですが、6Ω負荷1W出力の時はレンジ内なので、この点で周波数特性を測ります。これ以上の大出力の時は自作アッテネータを使います。アッテネータと言っても675Ω(680Ωの抵抗からセレクト)を入力に直列に繋ぐだけです。これでレベルメータ入力(75Ω)で1/10になります。もちろん使用する抵抗はW数と周波数特性に気をつけなければなりません。

 

 

歪み率の測定

 歪み率の測定には歪み率計と低歪みのオシレータが必要です。このどちらもパソコンで容易に実現できます。

 歪み率計は高速フーリエ変換を利用したスペクトラムアナライザのソフトを利用します。このソフトは基本的には周波数成分とそのレベルを観測するものですが、基本波(測定信号)に対する歪み成分(高調波)を見ることが出来ますので、歪み率を出す事は簡単で、ソフトの中に測定項目としてあります。

 著名なソフトにSound Technology社のSpectraシリーズ(Spectra Plus等)がありますが、とても高いものです。(Windows XPまでは試用版ダウンロードが出来たのですが、Vista以降ではなくなった(準備中?)ようです。)

 私が使用しているのはフリーソフトの「Wave Spectra」で、作者はefuさんです。歪み率を見るのに測定を止めなければいけないのが、ちょっと面倒ですが(その後のリクエストにより改善して頂きました)とても良く出来ていて、これだけのソフトをフリーで公開しているefuさんには感謝感謝です。(efuさんのサイトはこちら

 このソフトを使うときに注意しなければいけないのが、オーディオボードです。これが貧弱だとデータ処理をする前に、歪んだりノイズを拾ったりします。一般的にパソコン内部はノイズの巣窟ですから、外付けのオーディオキャプチャ機器をお奨めします。接続方法はUSBが簡単で、私は96kHzでのサンプリング(理論的に測定帯域は48kHzまで)が可能なローランドのUA−5を使用していますが、安価な48kサンプリング(理論的に測定帯域は24kHzまで)のものでも十分だと思います。

 オシレータはパソコンで瞬間瞬間の電圧値を16bit(または24bit)の精度で決める事が出来るのでD/Aコンバータ(オーディオボード)との組み合わせで簡単に低歪み率の発振器が実現出来ます。私が使っているのはこれもまたefuさんのフリーソフト「Wave Gene」です。但し、連続的に音を出力すると言うのは、結構CPUパワーを喰うらしく、前述のWave Spectraと同時に使用していると音が途切れる事があります。私の場合はデスクトップ機をオシレータに使用し、ノートを歪み率計に使っていますが、パソコンが1台の場合はオシレータ出力の信号をCD−Rに焼いて、オーディオ用CDプレーヤで再生するのも手です。D/Aコンバータの質はCDプレーヤの方がパソコンのオーディオボードより高いと思われますし、余計なノイズも拾わないでしょう。

 

左右チャンネル間クロストーク(セパレーション)の測定

 ステレオアンプにおいては左右チャンネル間のクロストーク特性は重要なファクターです。LchからRchへのクロストークを測定する時はLchが規定の出力になるように信号を入れて、Rchの入力はショートしておきます。そしてRchの出力に現れる信号を測定します。この時Lchの入力信号を切ってみて、Rchの出力が減少する事を確認します。使用機器は周波数特性を測る時に使ったオシレータとレベルメータで良いのですが、クロストークの量が小さいと残留雑音に埋もれてしまいます。この場合クロストークはノイズレベル以下としてそれ以上の測定をせずにすませてもOKですが、人間の耳はノイズに埋もれた単一トーンを聞き分けられます。(前述のWave Geneでホワイトノイズと、それよりレベルの低い単一トーンを同時に発生させてみると検証できます。)このためノイズに埋もれたクロストークの実力値がどのくらいであるか測定する事にも意味があると思います。

 ノイズに埋もれた信号を測定するには、狭帯域のバンドパスフィルタ(BPF)を使ってノイズを低減(ノイズは広い帯域にわたって大体一様に分布しているので)すればよいのです。でもそんなBPFなんかないよ! ご心配なく、Wave Spectraで周波数成分が観測できるのは、狭帯域BPFをスイープするのと同じ処理をソフトで実行しているからです。Wave Spectraで信号入力側と漏洩側のレベルを測定して、差をとればそれがクロストークになります。但し、気を付けなければいけないのは、この方法を使っても単一周波数のノイズであるハムとクロストークを分離することはできないので、測定周波数にはハムやその高調波を避けるようにします。

 

その他の測定機材

方形波発振器

 雑誌などでよく10kHzの方形波をアンプに入力して、波形を観測しています。パソコンでも方形波は出せるのですが、波形の立ち上がりがなまってしまう(帯域の上限が低い)ので、この目的には使えません。そこでCMOSロジックICを使って発振器を自作しました。周波数は固定ですが、簡便なチェックが目的ですから十分に使えます。回路を以下に示します。使用ICはMC14001と言うNORゲートですが、これはたまたま手元にあった石がNORだったためで、NANDでもNOTでもOKです。

 

評価雑音測定用フィルタ

 IHF-Aタイプの雑音評価用のフィルタが案外簡単に作れそうなので、自作しました。滅多に使うものではないので電源は、単四形の乾電池です。回路図はこちらです。

 

オシロスコープ

 波形観測にはオシロスコープが必要ですが、私が今使っているのは帯域が5MHzとおもちゃのようなハンディタイプのもので、ハイレルの
HH972と言います。本格的な波形観測には力不足ですが、前述の方形波観測でしたら、そこそこ使えます。
 オシロスコープが少し進化しました。右側の写真です。と言っても、レンタルバック品を安く購入したものですが、やっぱり2現象タイプは便利です。

 

マイクロフォン

 スピーカを自作しても特性を測定している人はそう多くないと思います。それは測定用マイクロフォンが高価だからです。私もなんとかならないのかなと思っていたのですが、見つけました! 桁違いの安さ(本当に桁が違うんです)の測定用マイク。それがBEHRINGERのECM8000です。添付の特性によれば(もちろん個別製品の実測ではないが)60Hz〜20kHzで偏差2dB以内と実に優秀な特性。ファンタム電源が必要ですが、前述のローランドUA−5にはマイク入力端子があり、ファンタム給電可能なので問題なしです。


 このマイクを見つけたので、タンデムドライブのスピーカ自作に踏み切りました。

 

アクセサリ類

ダミーロードボックス

 6Ω、8Ωの抵抗を内蔵し、スイッチ(中点オフ)で切り替えられるようにしたボックスです。中点でオープンに出来るので、ダンピングファクタの測定も簡単です。負荷抵抗の電圧測定には、ピンジャックとチップジャックを用意しており、テスタでもレベルメータでも簡単に接続出来ます。

 

アッテネータ

 写真奥は、10kΩのA型可変抵抗をボックスに入れただけのものです。オーディオキャプチャボードへの入力が過大になると、その時点で盛大に歪みを発生するので、調整用のアッテネータです。UA−5の場合、大体ピークが−10dBになるように調整すると良いようです。
 手前はアンプの入力を調整するアッテネータで12接点のスイッチと抵抗で製作しました。約2dBステップで可変出来ますが、それだけではレンジが足りないので、補助スイッチで24dBのアッテネータをON/OFFします。

  

 

FETチェッカ

 アンプの初段にFETを使うことが多いのですが、差動のペア取りをするのに、チェッカを自作しました。IDSSと一定のバイアスを与えた時の、Iを測定して選別します。


 

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