OTL用スピーカー「変化(Henge)」

(2005年7月:製作)

 

 

 

前書き

 真空管式SEPP(OTL)アンプが大掛かりになってしまうのは、内部抵抗が数百Ωの出力管を使用して6〜8Ωのスピーカーを駆動しようとするからです。このため多数の出力管を並列接続しなければならず、ヒーター電力だけで電熱器の代わりになるアンプが出来たりします。負荷インピーダンスが64Ω程度になるとアンプの出力部もかなり楽になります。そのためにインピーダンスマッチングトランスが存在する訳ですが、逆にインピーダンス64Ωのスピーカーを作ってしまえ! と言う考え方も成り立ちます。そんな経緯で先ごろ製作した7233 3パラSEPPアンプにマッチングするスピーカーを作る事にしました。

 

設計仕様

 でも一口に64Ωのスピーカーと言っても、そんなインピーダンスのユニットなど売られてません。8Ωのユニットを直列にするにしても8個必要です。これまた大げさになってしまいます。そこでテクニクス「EAS−10F12」再登場、10cmで16Ωのインピーダンスを持つフルレンジユニットで、以前にダブル駆動形システムの小型スピーカーを作った時に使用したユニットです。

 同一ユニット4個使用のスピーカーシステムで直ぐに思い浮かぶのはユニットを縦に並べたトーンゾイレシステムです。EAS−10F12の取扱説明書にもこの形式のエンクロージャー寸法と周波数特性が出ています。しかしこの形式の場合、ユニット間の干渉により高域が減衰してしまいます。これを補うのにスーパーツイーターを追加する必要がありますが、8Ωのスーパーツイーターに(64Ωへの)インピーダンス整合用抵抗を追加して、その状態でメインユニットと能率が合うようにするには、105dB/W位の製品が必要です。そうなると形式はホーン型に限られますし、とても高価です。

 それに64Ω専用で作ると、他のアンプに接続出来ません。4つのユニットを直列にしたり並列にしたりと接続替えが出来るようにしたいものです。そこで前面に2つのユニットを、背面にも2つのユニットを取り付ける形式としました。ユニットの接続は以下のような形態が考えられます。

 4つのユニットを駆動する時は背面にも音が放射されますから、音場型(水平面無指向性)に近い動作でしょうか。2つのユニットを駆動する時、残りの2つはドロンコーン(パッシブラジエータ)になります。通常のドロンコーンは、コーンの重量を変えたりして音の調整をしますが、こちらにはボイスコイルがありますから、これをショート(もしくは適当な抵抗で終端)することによってチューニング可能です。いろいろな駆動モードで音が変わる事が予想されるので「変化(Henge)」と名づけました。

 エンクロージャーはトールボーイ型としました。板取はこちらの通りですが、容量等を厳密に計算したものではありません。ラワン合板(910mm×1,820mm×15mm)からステレオ分2台を製作できるように決めたものです。まあ、4ユニットを駆動する場合は密閉型なのであまり細かい計算は不要ですし、ドロンコーンタイプの時も電気的にチューニング可能(なはず)なので、コストの面からも合板1枚で済むようにしました。

 

製作

 板はホームセンターで購入した時にカットして貰います。直線性と直角を出すためにはこれが一番です。但し、同じ寸法のカットを何回かに分けざる負えないような板取にすると組み立ての時に誤差が出ますから、鋸を一度セットしたらその寸法は一回でカット出来るように、また寸法に多少の誤差があっても、組み立てに支障がないように、板取を工夫します。下の写真は1台分の板で、ユニットと端子盤の取り付け穴を開けた状態です。

 組み立ては、空気漏れを防止するためたっぷりの木工用ボンドで接着し、コーナークランプで直角を出すと共に、どうしても避けられない板のゆがみを取るために要所を釘(私はレール釘を使っています)で固定します。接着剤が乾いたら次の部材組み立てに移ります。焦りは禁物、じっくりと行きます。裏蓋を残して箱が組み上がったら、補強材(前後方向に2本)を入れ、下部に重りを入れます。重りは鉛板4kgです。これは背が高くて底面積が狭いので、設置したときに不安定にならないようにするためです。きっと重心の低い安定した音になるでしょう。(笑)

 底面には高さ調整が出来るようにスパイクと受け皿が一体化した調整金物を使用します。このため鬼目ナットを埋め込むための補助部材も取り付けています。

必要な部材の取り付けが終わったら、吸音材を張り込みます。一般建築用の断熱材として売られているグラスウールを2枚に割いてビニールシートにホチキスで留めます。そしてビニールシート側を合成ゴム系の接着剤でエンクロージャー内部に接着します。

 背面板を取り付けて継ぎ目をカンナで修正、更に紙やすりで表面を磨いたら、次は塗装・・・が普通ですが、またもや手抜きで接着剤付きのビニールシートを張り込みます。ホームセンターで特価で売っていたものでたった1枚しかありませんでした。そのためギリギリになってしまい。底面は張り込み省略です。でも模様が石目調の黒なので、スピーカーユニットとマッチして精悍な印象です。シートを張り込んだ状態とユニット・端子を取り付けた状態の写真が以下の通りです。

 

試聴と特性測定

 まずは64Ω全駆動モードで音を聞いてみますが、あれれ音の良し悪しの前に、スピーカー正面から耳の高さが少しでも変わると高域が大きく変化します。ユニット間の干渉は予想より大きそうです。スピーカーユニットの取扱説明書に記載されていた特性例では、それほど大きな影響は無い感じだったのですが・・・・・。8Ωドロンコーンモードの時も同じ状況です。つまり前面の2つのユニットを同時に駆動してはダメだと言うことです。そこで試聴をしながら実用的にはこのような接続を採用することにしました。まあ、この他にも面白接続は可能ですが。

 これで音の方はまともになりました。10cmのフルレンジですから、低域はあまり期待できませんが、バランスの良い音を聞かせてくれます。音場型に近いためでしょうか。響きが豊かです。その分、定位は僅かに甘くなりますが、スピーカーシステムのキャラクターとしては好ましいと感じました。

 様々な状態での周波数特性を測定したものが、こちらです。本当は周波数特性だけでは不十分なのですが、とりあえず測定可能な範囲で、細々とやってます。

 


 

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