差動Phono EQ付き コントロールアンプ

 (2003年5月:製作)

 

 

前書き

 メインアンプをいくつか製作するとコントロール(プリ)アンプが欲しくなってきます。そこで自作することにしました。メインアンプが真空管ですから、こっちも真空管と言いたいところですがOPアンプです。個人的には適材適所だと思っています。

 

設計仕様

 コントロールアンプの場合どんな機能を実装するかは、各人の使用状況によって千差万別です。逆に言えば自作の場合は最適設計ができます。これまでの使用状況から次のような要求条件としました。

  1. トーンコントロールは使った事がないので実装しない。
  2. 入力はPhono、CD、MD、TAPE、AUX1、AUX2とし、AUX2は前面入力端子とする。
  3. Phono EQはMC、MMカートリッジ対応とする。
  4. REC OUTは3系統(CD-R、MD、TAPE)とする。REC OUTセレクタは設けず、再生出力と同じものが録音出力となる。
  5. バランス調整はソースの左右レベル差を補正するために設ける。従って片チャンネルが絞りきれる必要はない。
  6. ラインアンプの利得は10dB(3.16倍)として、ソースのレベル差に対応する。

 以上の条件で回路を考えますが、ある程度は独自性を出したいものです。そこでPhono EQを差動化する事にしました。カートリッジ出力は左右が分離しているので、バランス受けが可能(プレーヤーの出力を改造する必要がありますが)です。音質的にどんな効果があるかは不明ですが、微少レベルの伝送でコモンモードノイズの影響を排除できるのは魅力的(多分ハム等に強い、自作の場合アース回りに苦労する)です。但し、回路規模が大きくなる欠点があります。これを真空管で作るのは(初心者の私にとっては)困難です。そこでOPアンプを使用する事にしました。左右のバランス調整は0.5dBステップで5段階に減衰させ、反対チャンネルは左右の音量合計が一緒になるようにレベルを少し増やします。この機能はラインアンプの負帰還量を調整することで実現します。

 回路はこのようになりました。Phono EQはOPアンプ3台を使用して構成した「インスツルメンテーション・アンプ」と呼ばれる形式です。当初はICのアプリケーションノートの通りにMMカートリッジの時に初段の利得が1となるようにしていましたが、途中で気付いてMM時に20dB、MC時に40dBのゲインを持たせるように変更しました。またMM入力インピーダンスは47kΩ固定ですが、MCは3段階切替式です。OPアンプの入力インピーダンスが高いので、誘導を受けて動作が不安定(理想的には同相信号は排除されるのですが)になりました。対策として高抵抗でアースに落としています。また、CD入力のローパスフィルタ(時定数は可聴帯域の遙か上ですが)は当初のCDプレーヤ(マランツ製)で、ボーカルの子音がきつかったので入れました(こんな対策で効くんです)が、プレーヤを変更(ヤマハ)したところ直結でも症状が収まったので取り外しました(個人的に覚えのつもりで書いてあります)。
 またライン入力系および出力には直流カット用のコンデンサが入っていませんが、これは接続機器の直流重畳レベルが充分に小さい事と出力の直流電圧及びドリフトが許容値であることを確認したうえで、敢えて省いてあります。

 

製作

 製作は例によってユニバーサル基板に組みますが、この規模となってくると2.54mmピッチのハンダ付けと配線が、老眼には厳しい状態です。プリント基板を起こしたいところですが、一品物だし出来上がりまでには変更点もあると予想されるので、こつこつと目を労わりながら進めます。

 Phono EQのゲイン切替(MM、MC)とMCカートリッジ負荷抵抗の切替は基板に実装したDIPスイッチで行います。気軽に切り替える訳には行きませんが、めったに変更しないものですし、切替スイッチを背面パネルに出して、微小レベルで線を引き回すのは避けたかったからです。またOPアンプはソケットを使って実装します。これはICの保護用ではなくて、入力雑音レベルに個体差があるので差し替えて良いものを使用するためです。また大体のOPアンプはピン配置に互換性がありますから、別のICに差し替えることが可能です。

部品はアンプとイコライザの精度と決めるコンデンサと抵抗には誤差1%のものを使用。その他の抵抗は5%誤差のものから値の同じようなものを選別し、差動バランスまたは左右チャンネルの差が少なくなるようにします。イコライザ素子の定数のうち低域を受け持つ560kと5600pは、時定数計算では470kと6800pとなるのですが、NF型イコライザの場合RIAA基準特性より中低域がへこむ(ゲイン不足になる)のでカット&トライで変更しました。(と言ってもシミュレータで計算をして、基準特性と比較するだけです。OPアンプのいいところはイコライザ素子のインピーダンスを計算してやれば、計算と実測がぴたりと一致することです。)

 Phono EQ基板以外にはラインアンプ基板と電源基板があります。これらは簡単なものなので小さな基板に余裕を持って組み付けてあります。電源は正負の3端子レギュレータを使用して±15Vを得ています。電源トランスは、ソフトンさんで購入したリングコア電源トランスを使用しています。(メインの電源以外にも、制御用電源巻線などがあるのですが使っていません。ちょっと贅沢だったかな?)

 基板と入出力端子、ボリュームやセレクタとの配線はリボンケーブルを使って1本おきにアースに落として使う方法(ぺるけさん流です)を使っています。シールド線より加工が簡単で、クロストークなどに対しても充分な効果があります。

 ケースは秋葉原の店頭でタカチのWS70-32-23Sと言う品を見つけて、サイドウッドパネルで格好良かったのでちょっと高価でしたが決めました。前面背面パネル・底板・天板など全パーツがバラバラになるので加工がしやすいケースです。

 背面パネルは入出力端子と電源端子でほぼ一杯となっています。電源はIEC3ピン入力端子の他に電源連動でIEC3ピン(メインアンプ用)、平行2ピン(レコードプレーヤ用)の出力端子を設けました。Phono入力のバランスジャックはちょっと大げさですがキャノンです。

 出来上がりはこんな感じです。

   外観(前面)    外観(背面)   内部

 

特性測定と音

 特性測定はPhono EQのみです。ラインアンプの物理特性は当方の貧弱な機材で測れるレベルを超えています。EQの偏差は±0.2dB以内に収まっており充分です。ちょっと苦しいのは雑音レベルですが、OPアンプの規格からすればこんなもんだと思いますが、MC入力の時のノイズマージンは入力電圧が0.35mVの場合、54dBしかとれません。当初は初段にもFET入力のOPA2604を使っていたのですが、更にノイズが多かったので差し替えています。探してみた限りでは2回路入りの汎用OPアンプではこの辺が限界でしょうか?
MMの場合の雑音がMCの半分弱で総合利得から考えると、ちょっと納得がいきません。もう少し検討の余地があるかも! ハムは皆無でこの点は狙った通り(まぁ、メーカー製はアンバランス入力でもハム音は聞こえませんが)です。

 

R ch

L ch

利得(MM、1kHz)

38.9dB

38.9dB

利得(MC、1kHz)

58.9dB

58.9dB

雑音電圧MM(出力側、無補正)

0.26mV

0.26mV

雑音電圧MC(出力側、無補正)

0.61mV

0.61mV

消費電力

7.4VA (AC 105.0V)

 Phono EQの特性とRIAA偏差はこちらにあります。

 音(Phono入力)の印象ですが、プレーヤを改造したため以前と直接聞き比べる事は出来ません。イメージとしては高解像度です。全段差動メインアンプの時にも解像度が高い印象を受けましたが、解像度の高さは差動アンプの特徴(?)かもしれません。スピーカもバーチャル同軸タイプなので、再生音が面白いほどぴたりと定位します。

 


 

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