π/2空間用スピーカー

(2003年9月:製作)

 

 

 

前書き

 いきなりπ/2空間なんて聞きなれない用語が出てきましたが、要するに三方が壁の場所(もっと平たく言えば部屋の隅)に設置するためのスピーカーです。π/2とは立体角のことで4πが自由空間、床の上だと自由空間を平面で半分に区切っているので2π、床(または天井)と一方の壁ではその半分でπ、部屋の隅ではさらに半分でπ/2となります。今回は自宅食堂に設置しているスピーカーの特性が気に入らなかったので自作することにしました。

 このような部屋の隅にスピーカーを設置すると良く知られている事ですが、低音域がブーミーになります。これは高音域が比較的直進性が良い(指向性が狭い)のに対して、低音域は指向性が広く横や後ろに回り込んだ音が壁で反射して耳に届くため高音域と低音域のバランスが崩れるからです。最近の小型スピーカーは低音域を伸ばすために殆んどがバスレフ方式となっており、部屋の隅に設置すると低域過剰になります。

 壁による反射を考えると低域は素直(なだらか)に落ちていく特性が好ましく、密閉型が良いのですがキャビネット容積が小さいとキャビネット内の空気がダンパーの役割をするので、全然低域が出なくなります。かといってキャビネットを大きくすると取り付けが困難になります。そもそも食堂の片隅に小さなスピーカーを付けるのが目的ですから、大きくなっては困ります。バスレフ型のチューニングを工夫するしかないのでしょうか。

 でも面白そうな方法を見つけました。誠文堂新光社の「オーディオクラフトマガジン No.2」に出ていたタンデムドライブ(一般名はダブルドライブでしょうか)です。簡単に言えばキャビネットを2分割して内部にもうひとつスピーカを組み込み、前面に出ているスピーカと一緒に駆動する方法です。下図のように前面のスピーカーと内部のスピーカーが縦列(タンデム)で動作しています。

 詳しい原理が製作記事には書いてなかったので、以下は私の想像ですが、この方式の特徴は前面スピーカーと内部スピーカーの動きが同一であれば非常に大きな容量のキャビネットと等価になる点です。実際には内部スピーカの動きが(内部スピーカ用の)後部キャビネット容積により制限されるので、2つのスピーカーの動きが全く同一という訳には行きません。それでも前面スピーカーの背圧を減じ、より大きなキャビネットと同じ効果を与える事は出来るはずです。

 

設計仕様

 設計と呼べるかどうかは別として以下の様な条件で製作する事にしました。

  1. 壁に取り付けるので大きさは幅が25cm、高さは15cm程度とする。奥行きも高さと同程度。
  2. オリジナルのタンデム形式では奥行きが長くなるので、内部スピーカと外部スピーカは直角に配置する。(下図)

  3. 真空管アンプでのドライブを考えると、スピーカのインピーダンスは、なるべく8Ω近辺にしたい。
     このため16Ωのユニットを並列接続する。
  4. ユニットは箱の大きさから考えて、10〜12cmとする。

 まずはスピーカーユニットの選定ですが、16Ωで10〜12cmとなると、自作派スピーカーユニットの定番ブランド「フォステクス」にもありません。殆ど唯一の選択テクニクスの「EAS-10F12」となりました。キャビネットはコストパフォーマンスを考えて普通のラワン合板で厚さは12mmにしました。板のカットは正確を期するために、ホームセンターで買った時にカットしてもらいます。

 キャビネットを壁に取り付ける金具はボーズのロングセラー「101MM」に使えるタイプ(但し純正品ではなく、安価なもの)を購入しました。

 

製作

 キャビネットは接着面に木工用ボンドをたっぷり塗って、コーナークランプとはたがねで固定し、組み立てて行きます。外側が前面を残して組み立てあがったら、内部スピーカーの取付板を木工用ボンドで止めます。この時にユニット接続用の配線を板の隅をカットして通すことを忘れてはいけません。それから背面の接続端子用穴も。接着剤が十分に乾いたら、仕上げのために紙やすりを掛けたうえで、(背面部分のみ)木目調ビニールシートを貼り込み、接続端子を取り付けます。

 次に内部スピーカーを取付け配線します。この時外部スピーカー用の配線も事前にしておきます。そして吸音材(グラスウール)を適量入れて、前面板を接着します。この後は内部スピーカを取り出すことは出来ないので、間違いのないようにしなければなりません。接着剤が乾いたら、前面板に木目調ビニールシートを貼り込みます。そして側面にも貼り込んで、余計な部分をカットします。お次は外部ユニットに配線をして、前面板に取り付けます。これでスピーカとしては取り敢えず完成。後は取付金具を取り付けて壁につけるのみです。(製作途中の写真を撮っておいたのですが、どこかへいってしまいました。以下の写真は完成して取り付けた状態です。

 

特性測定と音

 特性測定はパソコンFFTソフト(今回はSpectraPlusのお試し版)と測定用マイク(Behringer,ECM8000)で行いました。ソフトを1/3オクターブの帯域幅に設定し、ピンクノイズを再生して測定します。
 下記は50cmの距離で測ったものですが、全体的に素直な特性です。200Hzに対して70Hz(最低共振周波数)のレベルが約10dB低下となっていますが、取扱説明書にあるJIS標準箱に入れた場合が8dBの低下ですから、超小型密閉箱としては上々の特性です。尚、30Hz以下の盛上がりはバックグラウンドノイズで、我が家の環境では、結構低周波騒音が大きいです。

 ちなみに、バックグラウンドノイズの状態は、下記の通りです。

 所定の位置に取り付けて両ch合わせて測定すると、以下の様になります。130Hz〜280Hzにかけて、盛上がりが見られます。これがコーナー設置の影響です。

  低域レベルの上昇は意図した範囲内であり、音を聴いていてもブーミーな点はなく、満足しています。スピーカーの第1作としては、成功だと思います。

 


 

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